トップページ > テレビ > 大仏開眼

 2010年5月4日更新

2010年4月11日平城京遷都1300年にちなんで―2

NHK古代史ドラマスペシャル「大仏開眼」


『平成の巨大建造物スカイツリーもよろしく!』


 かつて、ヤマト王権は巨大古墳を造り、“天武”王権は大仏を造った。
 新王権の勃興期には、権威を示すシンボリックな巨大建造物が必要とされるようだ。その王権が認知され権力の安定化が実現されれば、そこまで目立つものを、新たにムリをしてまで造らなくなる。
 例えば、ヤマト王権の支配が確立されたといわれる6世紀末までには、巨大古墳は造られなくなっている。“藤原”王権”が最初から権力を完全に掌握していた平安時代の400年間には、巨大建造物は全く造られていない。時代を下って、江戸時代初期には天下普請により巨大な江戸城が新都に造られた。振袖火事により天守を焼失するが、その後は再建されなかった。経済的事由といわれているが、明暦年間になると徳川政権はすでに安定期に入っていて、再建することの方がむしろ権力を危うくすると判断したためではないか。鎌倉・室町の中世には権力が分散化されていたから、巨大建造物を造る主体自体が存在しなかったといえる。未遂例として、安土城があげられる。これは権力掌握のフライングであった。
 昭和期にマスメディア王朝勃興期のシンボルとして、東京タワーが日本の中心にそびえ立った。21世紀も最初の10年を過ぎた現在、またもや超高層電波タワー建設中である。マスメディア王朝は、一度失墜した権威を再び蘇らせようとしているのかもしれない。
 盧舎那仏は「世界にあまねく光を照らす」存在だ、とドラマでは説明されていた。奈良時代であるから「世界」といえば、日本国土に限定した“世界”を想定していることだろう。唐・天竺や宇宙までを含めた真の全世界を概念的に把握しているわけではないだろうから。盧舎那仏は外来のものなのに面白い。それでも仏様は寛容だから、結局、世界のみんなをお救いなさるに違いないが。スカイツリーも“デジタルの光をあまねく光を照らす”ことで大仏や東京タワーのような権威を“世界”に示すことなるのだろうか。
 ところで、このドラマの恵美押勝はその容姿がまるで、織田信長か、ダースベーダーのようだった。権力者のイメージとしては短絡的で、これはこれで単純に楽めた。権力失墜に至る葛藤のディテールも、合戦の雰囲気も、まるで戦国時代を扱った大河ドラマを観ているようだった。宮廷の中の様子は、“平安朝”奈良時代といった趣き。阿倍内親王と吉備真備がデートするという衝撃の展開もあった。遣唐使がまるで、幕末の遣米使節とか、明治維新後の岩倉使節団のような意識で括られていた。そういえば、井上靖も「天平の甍」の中で遣唐使を“近代国家成立のへの急ぎ”のためとか叙述していた。いずれも当時の意識や様子とはあきらかにずれているはずだ。
 肝心の「大仏開眼」はそっちのけな感じであった。“大仏?ああ、そういえば造ったなあ”程度で、ほとんど“吉備真備物語”といえるドラマであった。

NHK放送のスペシャルドラマ 4月3日前編、4月10日後編
吉備真備:吉岡秀隆
阿倍内親王:石原さとみ
藤原仲麻呂:高橋克典
玄ム:市川亀治郎
藤原武智麻呂:苅谷俊介
真備の母:宮下順子
聖武天皇:國村隼
光明皇后:浅野温子
行基:笈田ヨシ
藤原宮子:江波杏子
橘諸兄:草刈正雄
作:池端俊策
音楽:千住明

大仏開眼 [DVD]
サントラ[CD]


ページの先頭へ