トップページ > 映画 > 恐怖のメロディ

 2010年5月10日更新

映画「恐怖のメロディ」

2010年4月18日ケーブルTVChザ・シネマにて鑑賞


『ジャズとカリフォルニア観光の旅をどうぞ!』


 デイブ(イーストウッド)につきまとう女性イブリンとは何者であるか。劇中では彼女の素性は一切語られない。まさに、ミスティ―霧のよう―な謎の存在だ。
 イブリンは、実はデイブの恋人トビーのいわば“生き霊”なのである。トビーはデイブの女遊びに傷つき、突然、姿を消した。そして現れたのがイブリンである。トビーの執念がイブリンという女性の姿となって立ち上ってきたといえる。だからもちろん、トビーの意志ではイブリンはコントロールできない。だが、それでもイブリンはトビーに代わって、デイブの心を試さずにはいられないのだ。デイブも負けてない。彼も分身を用意する。マッカラム巡査部長に自分に代わってトビーの保護を依頼するのだ。彼はなぜか、デイブにやけに親切だ。マッカラムはデイブの“守護霊”かもしれない。こうなるともう、“生き霊”イブリンVS“守護霊”マッカラムによる代理バトルである。その結末は…。やはり、そうなる。
 当時はやっていたアメリカン・ニューシネマ風のクールな出だしで始まるこの映画。その後、めまぐるしく、趣きを変えていく。恋愛ドラマ、サイコサスペンス、音楽プロモフィルム、ジャズ・フェス実録映画、そして、大トリはお得意のアクション。寄席演芸場よろしく、次々といろいろな出し物が登場してくるようだ。幕の内弁当といってもいい。ともかくどれかひとつでもお客様のお口にあえば、といった心持ちか。2時間近くのお時間をお金で頂戴するのだから損して帰すわけにはいかない。かつては、芝居小屋やレビューのように筋と関係なく唐突に歌や踊りが始まったり、映画音楽・主題歌がヒットしたりするのがあたり前であった。映画が様々な娯楽を包摂していて、映画館がカーニバル会場のようだった時代があったのだ。今ではこういった古風な感覚で意識している監督は他にいない。この映画においていうなら、例えば、ロバータ・フラックの「愛は面影の中に」を延々と流すイメージビデオのようなシーン。ストーリー上は、ほとんど必要のないものだが、息苦しい展開に疲れた観客に静かに間をとらせる心遣いみたいなものを感じる。カリフォルニアの海辺を舞台にした美しい映像だ。モントレー・ジャズ・フェスティバルのシーンは実際の音楽祭で撮られていて、極めて質の高いライブ演奏を聴くことができる。映画の舞台は、モントレー半島。半島を巡る風光明媚なドライブルート「17マイル・ドライブ」を上空から捉えた映像は、ほとんど観光案内ビデオ。トビーが彫刻家であるように、芸術の街としても知られるカーメルの美しく風情ある街並みも堪能できる。
 イーストウッドは、初監督のロケ地に自身の知り尽くしたこの街を選んだのだ。― 行ってみたくなった。



出演:クリント・イーストウッド、ジェシカ・ウォルター、ドナ・ミルズ、ジョン・ラーチ
監督:クリント・イーストウッド
製作:ロバート・デイリー 共同製作:ジェニングス・ラング
原作:ジョー・ヘイムズ
脚本:ディーン・リーズナー、ジョー・ヘイムズ
撮影:ブルース・サーティース
音楽:ディー・バートン
上映時間103分
1971年アメリカ

恐怖のメロディ [DVD]
ミスティ〜エロール・ガーナー
ミスティ[compilation]〜オムニバス



ページの先頭へ